■□■□ フォトダマ通信 Vol.75「糸魚川の岩山〜ある手紙からの伝言」の巻  □■□

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2006.11.2 記

 朝日が昇りはじめ、山並みの輪郭がうっすらと浮かびあがってきた。やがて、紅い
光は高い尾根から下へと照らす。色付きはじめた紅葉は、一段と色鮮やかに輝いてい
た。明け方の山中はかなり冷える。コーヒーを入れ暖をとった。私は、一枚の写真を
手にし、カメラを構え岩山を見つめていた。ある瞬間を待って…。

 北陸の石巡礼から新潟の糸魚川市に入った際、コインランドリーで洗濯をしていた。
その合間に荷物の整理をしていると、ある手紙が出て来た。それは、過去に連載して
いた雑誌の記事を読んだ70代の男性から頂いたものだった。手紙の内容は、「石に呼
ばれている」という私の感覚に共感し、石に強い興味を持っているという。その方が
若い頃、ある有名な写真家のカバン持ちをしていたエピソードも書かれていた。
手紙の中には、ある岩山と湖が写っている一枚の風景写真が同封されていた。異国の
風情を感じる写真だが、どこの場所かは書かれていなかった。後日、私はその男性に
礼状を出すと、その方から再度手紙をもらった。そこには、写真についての詳しい説
明が書かれていた。その写真は、岩山の影がある時期にしか撮れないということを強
調していて、その場所と時期を事細かに綴られていた。

 私は何気なくその手紙を読み返して、はっとした。なぜなら、その岩山の場所が、
いまいる糸魚川で、しかも、その写真が撮られたのが11月上旬だったからだ。私は、
何かに導かれたようにこの手紙を見つけたと思った。まさに、「石に呼ばれている」
としか思えない。急遽、その岩山を目指すことに決めた。その夜は、興奮のあまり
一睡も出来きないまま朝を迎えていた。
 太陽が少しづつ移動すると、岩山の影も動きはじめていた。その瞬間は、近づいて
いた。頂いた写真と見比べながら、私はシャッターチャンスを逃すまいと岩山の影を
じっと見つめていた。

 その方に依れば、その山は明星山(1188.5m)と呼ばれる石灰岩の岩山で、その
下に流れる小滝川は日本唯一のヒスイ(硬玉)の産地だという。
 そこからの風景は、地球の太古の記憶を思い起こさせるようなインパクトがあり、
チベットのカイラス山と同じような聖域性をも感じさせた。
 やがて、その瞬間がやってきた。山の影は、次第に人の横顔のように見えはじめた。
それは一瞬の出来事だった。
心残りなのは、この男性が送ってくれた写真の中>にある影のように、はっきりとは
人の横顔に見えなかったことだ。しかし、明らかに不思議な現象を体験することがで
きた。

 その岩影を撮影するため、夜明け前から明星山と周りの風景に向き合うことで、
清々しい風が私の身体を流れて行ったように感じた。この場所とその場の空気感に
出会う切っ掛けを下さった、男性に感謝しつつ、私は明星山を後にした。

 その後、直江津港から佐渡島へ渡った。西海岸を北上すると、次々と巨岩、怪石
が現われた。神子岩、烏帽子岩、人面岩、夫婦岩…。相川にある二ツ岩明神のご神
体の岩は、千羽鶴や布が地元をはじめ日本各地からの崇敬者によって奉納されていた。
 弘法大師空海は、京都から鬼門(丑虎)にあたるこの佐渡島に蓮華峰寺を建立した
と言う。
 佐渡島には、時代が変わっても多くの人々を引き寄せる、ある種の呪力があるの
ではないだろうか。私も引き寄せられた一人である。
               日本石巡礼の途上、佐渡島にて
                          すだぐんじ 拝

※朝日を浴びた明星山の写真はこちらから見ていただけます。
http://tengun.seesaa.net/

●石巡礼の軌跡
10/22…石川 片野海岸の人面岩
10/23…石川 志賀町の機具(はたご)岩(能登二見)、輪島市の窓岩、
珠洲市の見附島(軍艦島)、能登町の祭祀遺跡・石仏山の磐座
10/24…富山 高岡市の義経雨はらしの岩、女岩、男岩
10/26…福井 坂井市の東尋坊、雄島の磁石岩(雄島流紋岩)、勝山市
の岩屋観音(岩屋稲荷神社)
10/27…石川 白山市の安産岩(仏御前)、岩間噴泉塔
10/29…富山 南砺市の天柱石、相ノ倉合掌集落(世界遺産)の廿日石、
天狗のあしあと、立山市雄山神社・祈祷所の立山若宮の岩
10/30…新潟 糸魚川市の夫婦岩
10/31…新潟 糸魚川市の明星山と袴岩
11/1…新潟 佐渡市の神子岩、烏帽子岩、人面岩、夫婦岩、二ツ岩明神
11/2…新潟 佐渡市の二つ亀岩、両宮神社の岩

◎須田郡司オフィシャルウェイブサイトはこちらから見て頂けます。
http://www.sudagunji.com
◎日本石巡礼の終了間近に
2003年10月にスタートした日本石巡礼は、三年間が経過しました。
この11月をめどに区切りをつけ終了する予定です。12月からは、これ
まで撮りためた石の写真の整理と本の出版に向けての籠りの作業が始
ります。いま、日本石巡礼の旅の軌跡を色々な形で本にしたいと思案
しつつ、何人かの方の方に相談しております。この活動と軌跡に興味
を持ってくれそうな出版社等をご紹介いただける方がおりましたら、
ぜひご連絡を下さい。

どうか、宜しくお願い致します。
須田郡司拝
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