■□■□■□  フォトダマ通信 Vol.69「遠野・知られざる猫石」の巻     ■□■□■□

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2006.8.30 記

 「あれが猫石です。」男性が指さす方向を見ると、薄暗い杉林の隙間から岩塊が覗
いていた。近付くと高さ3メートルほどの巨石が斜面に佇み、苔で覆われている。
男性は巨石によじ登り、懐かしむように呟いた。
「子供の頃、よくこの石に上っては遊んだものです。」

 最近、動物名を持つ石が気になっていた。北海道では礼文町の猫石、せたな町の親子
熊石などが印象に残っている。東北石巡礼の途上、何年かぶりに遠野の続石を訪ねた。
その帰りに駐車場の観光案内板で、猫石を見つけた。さっそく、その地図を頼りに探し
てみたが一向に見つからなかった。そこで、近くの水車を作っている工務店の方に猫石
のことを尋ねると、ある方の家にバイクで案内してくれた。その方は、屋号が猫石さん
と呼ばれていた。
猫石さんは、フォトダマ号のナンバープレートを見て、「わざわざ群馬から来たのか、
それじゃ案内してやろう。」
そういって服を着替え、軽トラの後を付いて来るようにといった。
裏山の林道をしばらく走ると左手に空き地があり、車を停めた。猫石さんは鉈と鎌を備
えたベルトを腰に巻き、生い茂る草を鉈で払いながら森の中へ入って行った。私は機材
を持ち、猫石さんの後を付いて行く。

 猫石さんに依れば、この辺りは昔、畑だったそうで、その頃は下の方から石ははっき
りと見えたらしい。約30年位前に杉の植林が始まり、今では石はすっかり森の中に隠
れてしまったという。

 15分ほどで猫石に辿り着く。かつて、この石の上から遠野が見渡せたと言う。猫石
さんが子供の頃、眺めた風景はどのようなものだったのだろう。そんな想像をしながら
猫石に上がってみたが、杉林しか見えなかった。しばらく猫石を撮影しながら、いった
い猫石の名の由来は、どこか来ているのだろうかと思った。その石は、猫の形には似て
いなかったのだ。そのことを猫石さんに尋ねてみると、次のような応えが返ってきた。
「いつ頃のことかはっきりしないが、昔、この石が割れた時、猫が泣く声のような音が
して、それから猫石と呼ばれているんです。」
猫石を観察すると、確かに真っ直ぐな亀裂が走り割れていた。
また、猫石さんの屋号の由来も聞いてみたが、はっきり分からないという。
もしかしたら、猫石さんは代々この猫石を守りつづけている家系の方なのではないだろ
うか、と思った。
猫石さんは、この猫石を案内している間じゅう、どこか嬉しそうに微笑んでおられた。
私は、猫石さんにお礼を言って絵葉書を渡して別れを告げた。

 遠野といえば、続き石や羽黒岩などが知られている。猫石は、かなりマニアックな石だ。
それにしても、猫石を猫石さんにご案内して頂けたことは、実にありがたいご縁だった。
いつの日か、猫石から遠野が見渡せたる日が来ることを祈りつつ…。

                                   雨の山寺(山形)にて
                                               すだぐんじ拝

※遠野の猫石の写真はこちらから見て頂けます。
http://ch.kitaguni.tv/u/1871/

●石巡礼・石の語りべの軌跡
8/14…青森・下北半島の脇野沢の石神神社、鯛島を見て仏ヶ浦へ
8/15…青森・風間浦村の二見岩(夫婦岩)、むつ市の恐山へ。
8/19…秋田・秋駒山荘でイワクラ学会の方々と合流し田沢湖周辺の青龍神社の巨岩、
御座石神社近くのかなえる石、鏡石、アラハバキを祭る四柱神社へ。岩手・盛岡市
でわんこそば(119杯)を食べ三石神社、盛岡城跡のイワクラ。
8/20…岩手・榎田晶美さん達に遠野市の石上山、巌龍神社の不動岩をご案内頂く。
8/21…岩手・遠野市の続石、猫石
8/22…岩手・大東町の続石、一関市(旧・千厩町)の夫婦岩
8/23…岩手・平泉町の達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)の岩、
鬘石、東和町の丹内山神社のイワクラ
8/24…岩手・兜明神、紫波町の阿部幹朗宅で石の語りべ。
8/25…岩手・雫石町の玄武洞
8/26…秋田・大仙市(旧・神岡町)の東京写専時代同期、故・阿部徹君の墓参、唐
松神社の石庭、大曲の第80回花火大会
8/27…山形・遊佐町の出羽二見の夫婦岩、弁慶岩
8/28…山形・湯殿山
8/29…山形・上山市の化け石、掛入石


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連絡を下さい。
voice_of_stone@sudagunji.com

◎須田郡司オフィシャルページ
http://www.sudagunji.com/
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