■□■□     フォトダマ通信 Vol.44「天草・牛深の石神」の巻       ■□■□

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2005.09.24 記

牛深の山間にある畑から、こんもりとした森が見える。道なき草むらを掻き分け
森に近づくと、取り囲むように石垣が築かれていた。高さ1メートル程の石垣に
は締め縄が巻かれ、中に入ると小さな広場になっていた。まるで沖縄のウタキの
ようだ。いや、少し違う。よく見ると広場の奧に高さ2メートル程の石神が鎮座
している。丸みを帯び楕円状の石は三つの石が重なりあい、その前に祭壇と灯籠
が置かれていた。広場の右手には、椎の巨木がすくっと立ち、森を支える生命樹
のようだ…。

9月中旬の深夜、天草列島の南端、牛深市に向かって走っていた。阿蘇で復活し
たフォトダマ号は潮風を浴びながら天草五橋を快適に渡った。調子もよい。午前
2時、牛深市内に入ると干物の匂いがして島独特の風情が漂う。市街地に入り、
車を停められる場所を探し走っていると野犬の群と出くわした。十匹くらいの群
だ。もしかしたら、この島も捨てられた犬達が野犬となったのかも知れない。
そう思いながらふと、昨年訪れた伊良部島を思い出していた。その夜、牛深港の
近くで車上泊する。

翌朝、牛深市在住の山下陽一さんを訪ねる。山下さんとの再会は四年ぶりくらい
になるだろうか。山下さんは、突然の連絡にも関わらず快く訪問させて下さり、
牛深の巨石信仰の話を聞かせてもらう事ができた。山下さんは、伊勢の猿田彦神
社の主催する猿田彦大神フォーラムの研究助成公募で一席をとられた方で、その
時の研究が、地元牛深市にある権現山の巨石信仰と猿田彦大神の関係についてで
あった。山下さんは民俗学研究家としての顔と、詩人としてのお顔も持たれてい
て、これまでに何冊かの詩集も出されていた。また、河童の研究もされていて、
ご自宅前には「河童庵」の石碑が立てられていた。

しばらくお話を聞いていると、実際それらの巨石を拝見できないかと思い、その
巨石への行き方を伺うと、山下さんは、さっそく何人かの知り合いの方に連絡を
取り、案内していただける手配をして下さった。

お昼前、近所の方が車を出して下さり、我々は権現山へと向かった。かなり急な
坂道をひたすら上って行くと、山頂近くに駐車場が見えてきた。車を停め、緩や
かな階段状の坂道を上りきると、しばらくなだらかな道になった。小さな小屋を
過ぎると、森の中に急な石段が見え、その上に巨石が現れた。石段の横に、猿田
彦大神の看板がある。石段を上がって巨石に近づくと石は三つに割れていた。

これまでも、石が三つに割れた形をよく見かけた。加波山の三尊石や足摺の三つ
石などだ。石の前には、祭壇がしつらえてあり蝋燭が置かれていた。
「権現山の猿田彦の神さまは、庶民が本音で願いことができる神さんなんです。」
と山下さんは仰る。山下さんの話に依れば、日清、日露戦争、大東亜戦争の頃、
地元牛深出身で徴集された出兵兵士達は、表立っては神社で「お国のために死ん
できます。」と言い、その後、この権現山に登り、猿田彦大神を祭る巨石の前で
「無事に生きて還らせて下さい。」と本音を願ったと言う。

戦後60年が過ぎ、国内においては平和な世の中がつづき、いつしか権現山にお参
りする人も少なくなったとの山下さんのお言葉に、いまの日本の政治的な変化をど
こか象徴しているように思えた。
権現山の巨石は、時代の流れのなか、人々の心の変化をただ黙って見据えているか
のように見える。帰り掛け、権現山を西側から望むと見事なピラミッド状の姿を見
せてくれた。やはり、かんなびの山には信仰されているイワクラがある。そう思っ
た。一旦、山下さんの家に戻り昼食を済ませてから市役所に向かった。
山下さんの依頼で、地元に詳しい職員の方に案内していただけることになった。

我々は、牛深市の西海岸添いの山間にある石垣に囲まれた森の中にいた。沖縄のウ
タキにも似ている空間は、山下さんの説明に依ると「平(じゃら)の神」を祭る祭
祀場だと云う。平(じゃら)の神とは、龍神の事で、地元集落の人々は五穀豊穣、
海上安全などを祈願していると云う。しかし、最近は年に一度、それも何人かの人
だけが、里宮祭りの報告にお参りされるだけだとこと。しばらく、森の石を観察し
ていると、奥の巨石の周りをサークル状に小さな石が取り巻いていることに気づい
た。しかし、辺りは草が茂り全体の構成がはっきりとは分からなかった。

「かつて、平(じゃら)の神への正式な参道があったのですが、残念ながら今は道
が草に隠れてしまいました。今は、草木が覆っていますが、かつて、この場所から
海が見えたんです。」そう職員の方が説明されると「この平(じゃら)の神こそ、
文化財として大切に保存しなければならないと思うんですが…。」と山下さんは
やや嘆くように呟かれた。

平(じゃら)の神を祭る場所を、かつてあったような姿に取り戻すことは、容易で
は無いかもしれない。しかし、この雑草を払い海を望むことができたら、ある光の
道が立ち現れ、それが人の心に失われた何かを思い出させるような気がしてならな
い。
日本全国には、このように忘れ去られようとしている石神たちの存在は決して少な
くないだろう。石巡礼の旅のなかで、いったい何ができるかを考えた時、石神たち
の存在を「ことほぎ」ながら、その地を大切にしている方々を陰ながら応援できた
らと思う。
沖縄のウタキとヤマトのイワクラが融合したような空間、「平(じゃら)の神」を
後にしながら、そんな思いをいっそう強く抱いた。

                   阿蘇大陸(九州)にて
                             すだぐんじ拝

●フォトダマ通信後記

☆河童庵・山下陽一様には牛深の石神世界をご案内していただき誠にありがとうござ
いました。また、奥様のお持て成しに感謝申し上げます。

☆由布院塚原の春日山荘で江藤さまと約四年ぶりに再会する。この度、巡礼宿をご提
供いただき、また朝の散歩でいくつかの石を案内して下さり感謝申し上げます。

☆ビーグッドカフェ宮崎(NPO法人ひまつぶ荘オープニング)にてゲスト参加。約百
人近い人々が集まり、素敵な雰囲気の中、スライドトーク&ムビラ演奏をさせて頂く。
環境NPO.H-imagin代表の松本英揮さんの「地球スライドショー」はロードムービー
を見ているような心地よい語りで、環境問題を子供達の笑顔、自然讃歌へとポジィテ
ィブな広がりへと導いてくれた。一切空の雅楽、アフロビート(ジャンベ、ディジュ)
のサウンドを楽しませてもらう。今回、NPO法人ひまじん事務局のJUNちゃんには
大変お世話になりました。ありがとうございました。

☆幸島近くのカレー屋さんアフロビートを訪ねる。ビーグッドカフェ宮崎でジャンベと
歌で参加してホウちゃんとは、一昨年、奄美の加計呂間で会っていて偶然の再会だった。
ホウ&ヒコちゃん、そして素敵な仲間達との出会いに感謝!

◎今後の予定

急遽、打ち合せのため月末、群馬に向かい関東石巡礼。
10/15.16伊勢猿田彦神社の「お開き祭り」から紀伊半島へ。  

◎「VOICE OF STONE 聖なる石に出会う旅」(新紀元社)をお求めの方へ。

◇本の内容は、友人の音楽家奥村氏のHPで紹介していただいておりますので、参考に
して下さい。
http://www.members.aol.com/nobfile/voiceof/pages/aindex.html

◇本の購入方法は、直接、須田まで連絡
をいただくか、下記の場所へお問い合わせ下さい。
本の代金は1890円(税込)です。
発送の場合は、別途送料340円(一冊の場合)が発生致します。

◇SPACE・侑(群馬・館林市)…日本石巡礼をスタートしてまもない頃、展覧会を
させて頂いたギャラリーです。電話/FAX 0276-75-3953
SPACE-U HP:  http://www1.ocn.ne.jp/~space_u/ 

◆あるでばらん(岡山・笠岡市)…石好きオーナーの薬効手染め(シルク)のお店です。
電話086-65-0896 FAX086-65-1460 ご予約はFAX希望。
あるでばらんHP: http://www.aldebaran-well.com/

◇あなんど(徳島・日和佐町)…薬王寺の向かいにあるカレー&チャイ屋・アジアン雑
貨のお店です。電話/FAX 0884-77-2266

◆ちろりん村栗林店(香川・高松市)…自然食品のお店です。電話 0878-37-2976

◇ヒーリングストーンAlice&Anne(愛媛・今治市)…今治駅の近くにあるパワーストー
ンのお店です。電話 0898-31-0579








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