□■□■    フォトダマ通信 Vol.19 「断髪式」の巻    □■■□

        
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十数年ぶりに髪を切った。それは、阿蘇との出会いの象徴であり、自分にとって
新たなスタートを意味していた。

9月17日、熊本の菊地町で約13年ぶりに舞台俳優の木内さんと再会した。
ある方のご縁で、彼女が一人芝居をすることを知った。
日本石巡礼キャラバンでは、思いもよらない再会がしばしば訪れる。木内さんと
の再会も、ひょんな事から巡ってきた。偶然は無い…そう思える瞬間だ。

シャボン玉ショーで全国を公演している友人の藤原秀敏さんと滑川アイランドに
行ったのは、今から15年位前になる。当時、ドッグショーをしていた宮沢さん
を紹介していただき、ショーを拝見し宿泊させていただいた。その時、宮沢さん
から奥さんが芝居をしていることをお聞きし、何度か東京での公演を見たことが
ある。その奥さんが木内さんだった。その頃、木内さんはカモネギショットと云
う女性三人のグループに参加していてパワフルな演技が印象的だった。

菊地町のある民家の納屋には、約50人の人達が集まり、改築した舞台を見守っ
ていた。初めに阿蘇在住のアーティスト、ビエントの演奏が始まった。ケーナや
オカリナとシンセサイザーを使った二人のユニットのサウンドは、阿蘇の大自然
をイメージした心地よい風を運んでくれた。
やがて、木内さんの一人芝居「陽子お婆ちゃん」シリーズが始まった。お婆ちゃ
んに扮する木内さんの芝居は、アドリブを交えあっという間に観客を笑いの渦に
巻き込んだ。芝居の中では、時には環境や社会へのメッセージを折り込みつつ子
供から大人まで引き付けていた。久しぶりの芝居は、懐かしさと同時に、やりつ
づけている事の情熱が伝わってきた。熱演との再会は嬉しかった。

髪結いをされている吉田和美さんと出会ったのは公演終了後、地元の食材を頂き
ながらの親睦会の席だった。吉田さんは、木内さんのサポーターのお一人で何人
かの仲間の方々と来られていた。


その頃、私は急遽、ある雑誌の打ち合わせのために東京へ行かなくてはならなか
った。時間的な事もあり、熊本にフォトダマ号を置き飛行機で行くことにしてい
た。東京に出発する前日、ふと、髪を切りたいという衝動が立ち上がった。その
時、吉田さんに切って頂きたい、そう思った。
20日の朝、私は吉田さんに電話をして断髪のお願いをした。お休みにもかかわ
らず「夕方のバリ舞踊の練習が終わったら、大津に来て下さい、カットしましょ
う」と心良く引き受けて下さった。

9月20日夜、大津町の「髪結館吉田屋」の椅子に座っていた。
髪結館吉田屋は80年の歴史を持ち、吉田さんは三代目にあたる。「100年は
つづけたいと思っているんですよ」と語る。
赤煉瓦をしつらえた室内は、大正モダンの趣を感じさせる。私は、このような処
で髪を切っていただける事を光栄に思った。

いつ頃からか、髪〓かみ〓神に繋がる…などと意識し、髪の毛を伸ばしつづけ
十数年の時が流れていた。
95年のチベットのカイラス山巡礼の折り、ドルマ峠の手前では巡礼者が断髪する
光景と出会った。チベット人に依れば巡礼中に髪を切る行為は、過去の囚われを
捨てる意味があると云う。
日本石巡礼キャラバンを始めて、ほぼ一年が経過する。大袈裟ではあるが私は、
蘇りの地、阿蘇で生まれ変わりたいと思った。
すべてを吉田さんにお任せし、一時間程で断髪式は終った。
いつも見慣れている自分の顔は、そこには無かった。それだけで、心の中に何か
新しい風のようなものが吹き始めていた。吉田さんは、切られた長い髪の毛の束
を紙袋に入れて、私に差し出して下さった。
吉田さんにお礼を述べ、晴れやかな気持ちで髪結館吉田屋を後にした。
走るフォトダマ号の中で、何かが変わった自分を感じつつ石巡礼への熱い思いは
決して変わらないと、私は確信していた…。


東京での用事を済ませ、お彼岸の中日、お墓参りで群馬に帰省する。七十歳を過
ぎる父は、はじめ髪を切った事にほとんど気付かなかった。
中野に住む三歳の友人桃太郎は、会うなり「ぐんちゃん かわった」を連発して
いた。


                2004.9.26
                  お彼岸の東京にて
                             須田郡司拝


●フォトダマ通信後記

◆お知らせ◆

  10月4日発売号より、Weekly Yomiuri(読売新聞社)に「石の声を聴け…
Stone Voice」と題し日本と世界の石を写真・文で連載することになりました。
どうぞ御覧下さい。


★ 阿蘇滞在に於いて、阿蘇坊窯の山下太さんには大変お世話になり感謝申し上
  げます。

★ 8/30 友人の曽我部夫妻の紹介で、ご両親が住む熊本の川本ご夫妻の家に泊
  めて頂く。誠に有難うございました。

★ 9/8 台風18号明けの大牟田に亡き友人松尾威のお母様宅を訪ねる。台風で
  飛んだタイルを直させて頂く。松尾が亡くなってこの秋で七回忌になる。仏
  壇に線香をあげ手を合わせると、懐かしい写真があった。それは学生時代に
  彼と撮影に出掛けた時の赤煉瓦倉庫でのポートレートだった。お母様には、
  野菜のお土産まで頂き感謝申し上げます。

★ 9/14 崇城大学にて、ビデオ上映(ケルト、カイラス)と石の話をさせて頂
  く。このような機会を与えて下さった崇城大学の三枝様にお礼申し上げます。
  また、巡礼宿のご提供とフォトダマ号をお預かり頂き感謝申し上げます。

★ 9/19昼 熊本県立劇場にて龍村監督のお話を拝聴しガイアシンフォニー五番
  を見る。「すべては繋がっている」と云うメッセージは石巡礼の中でも気付
  かされたことで共鳴した。

★ 9/19夜 パレア10F会議室にてスライド上映をさせて頂く。(財)阿蘇地域
  振興デザインセンターの坂元様をはじめ、NPO日本巨石文化研究所の方々に
  大変お世話になりました。御来場下さった皆様方にお礼申し上げます。

★ 東京滞在では、西見君に大変お世話になりお礼申し上げます。


◎ この度、メールマガジン配信一周年の節目にあたり、皆様からのお便りを紹介
  させて頂ければと思っています。どうぞ、ご意見、ご感想などをお寄せ下さい。
  (掲載分は10月10日までにお願い致します)
  尚、メールマガジンの都合上、文章を短く編集させて頂くこともありますの
  で、どうか御了承下さい。また、頂いた文章に名前の無いものは載せられま
  せん。実名もしくは、ハンドルネームを添えて下さい。

  拙い文章ではありますが、今後ともメールマガジンを宜しくお願い致します。
  お便りをお待ちしております。(須田)

※ ひきつづき小冊子「日本石巡礼」(石文社制作)をお分けしております。
  ご希望の方は、須田までメールでお問い合わせ下さい。

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