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■ □■     フォトダマ通信Vol.16 「富士の祈り」の巻     □■

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いったい、どの位の時が流れたのだろう。びしょ濡れになった体は、自然に足踏みを
して体を温めようとしていた。雨は、いっこうに止む気配が無い。ふやけて皺々にな
った手を擦り合わせてみたが、もはや感覚は麻痺しつつあった…。


6月21日(夏至)の朝、富士山麓の朝霧アリーナはすっかり霧に覆われていた。集まっ
た人々によって、大きな人の輪が作られようとしていた。どの位の人数が来ているの
か分からないが、しだいに数は増えていった。我々は風雨にさらされながらも、その
輪を保ち続けていた。
輪の中にはサークル状に石が並べられていて、その中央には小さな白いテントが張ら
れていた。そこに火が灯され、ネイティブアメリカンによるセレモニーが始まった…。


主催者は時折マイクでセレモニーの内容を案内するが、風雨と霧、テントの中で何が
行なわれているか見るすべもない。セレモニーは、ゆっくりとした流れの中で進んで
いった。
朝8時頃からスタートしたが、一時間もしないうちに体はびしょぬれになった。しか
し、多くの人々は風雨にさらされながらも、全体が何か意志を持っているかのように
厳かに見守り輪を保っていた。わずかに霧が晴れかかった。すると対面には多くの人
達の姿が浮かび上がり、その数はニ千人以上いるように見えた。


かなりの時が流れて、うるま(沖縄)の方による祈りの神歌、アイヌの方のカムイノ
ミも行なわれた。人々は、各々の思いでこの祈りのセレモニーに参加していた。
その時、台風6号はまさに日本列島を縦断しつつあった。それは、あたかも龍神によ
る大いなる禊ぎが始まったようでもある。火(カ)と水(ミ)の洗礼、カミ(神)を
感じるには十分過ぎた…。


セレモニーの前日6月20日朝、私は友人達と富士山麓で行なわれる「世界平和の祈り
の日」〓WPPD(WORLD PEACE PRAY DAY)というイベントにフォトダマ号で目指して
いた。埼玉を午前五時に出発し、車は順調に走っていた。しかし、忍野の近くになる
とフォトダマ号の異変に気付きはじめた。クラッチの調子がおかしいのだ。エンジン
をふかしても回転数だけ上がってスピードがでない。車の中に、焦げ臭い匂いが漂う。
しかたなく、途中で休みながら運転をし、騙し騙し何とか走らせるしかなかった。河
口湖に来たとき、急に睡魔に襲われ、友人には申し訳ないが、しばらく車の中で仮眠
をすることにした。


ようやく会場に着いたのは、お昼を回っていた。会場では、様々なイベントが同時進
行的に行なわれていた。平和と祈りのギャザリング、先住民からのメッセージ、子供
アート展、ストーリーテリング、ワークショップや大地と共生するための生活術の提
案などなど。同時進行のため、駆け足でも回りきれないのが残念だ。そして、WPPDキ
ッチンでは参加者全員にランチを提供していた。入場料は無料で、すべて募金やカン
パとボランティアスタッフに依って運営される事に驚かされる。しばし、懐かしい人
達との再会を味わっていた。


午後6時を過ぎると人々は、朝霧アリーナに集まり大きな輪を作り始めた。しばらく
すると富士山本宮浅間神社から約22キロの道程を行進してきた人達が馬と共にアリー
ナにやってきた。人々は拍手をして、彼らを迎えた。ネイティブアメリカンにとって、
天を仰ぎ、大地を踏みしめ、歩くことは、母なる地球、父なる空への祈りであるとい
う。そのような思いで、馬と人による、せかいへいわといのりのウォークが行なわれ
た。その夜、フォトダマ号で道の駅に宿泊する。


1995年の秋、富士吉田の富士山浅間神社近くで、二十数人もの人達が、鳴りものを鳴
らしながらフィリピンから来たキドラットの褌ダンスの踊りの輪の中にいた。
札幌のみかみさんの呼び掛けで「富士の祈り」というセレモニーに参加していた。そ
の年は、阪神大震災、地下鉄サリン事件などがあった年で、フィリピンではピナツボ
火山が噴火していた。
個人的には、清里でのテックナット・ハーンのリトリートに参加し、その後フィンド
ホーンの仲間とカイラス山の巡礼をした年でもあった。
参加者は音楽家、宗教家、気功家、医師、研究者などさまざま方々でフィリピンから
来た映画監督キドラットはピナツボ火山の噴火ででた灰と、芽が出たばかりの椰子の
実を持ってきていた。


セレモニーの前日、我々は富士浅間神社の代々御師を務める、きこりさん邸に泊めて
頂きながら祈りのセレモニーについて話しあった。ある宗教者のこだわりを切っ掛け
に、朝まで生討論状態になっていた。ある仏教者は、宗教観の思いから、セレモニー
の仕方でどうしても譲れないものがあるようだった。そのこだわりから、朝方まで議
論するとは誰も想像できなかった。
人々の争いの根は、僅かな差異でしかない。しかし、僅かな差異が大きな溝を作って
しまう事を知った。その小さな祈りの集まりは、思いの違いはあれ翌朝、浅間神社を
参拝し、無事に祈りのセレモニーを行なう事ができた。


「世界平和と祈りの日」のセレモニーはようやく終わろうとしていた。最後に、主催
者は一人一人がテントの中で焚かれた火に煙草の葉を祈りと共に投げ入れるよう呼び
掛けた。二千人もの人々は少しづつ、ゆっくりと時計まわりに動き始めた。指も冷た
くなり、雨風の中、ムビラを弾きながら列に身を任せる。
朝八時から始まって、ようやく終わったのは三時半過ぎだった。その後、我々はWPPD
キッチンで食事を頂いた。
セレモニーが終わり、友達と温泉に向かう。そこにはWPPD帰りと思われる多くの若者
達の姿が目立った。セレモニーで、びしょ濡れにになった体を温泉に浸かると、心と
体はしだいに癒されていった。見知らぬ若者達と、何か話すわけでも無いが、夏至の
日の祈りを共有できた事に、豊な気持ちになっていた。若者達は、別れ際「お疲れさ
ま!」と声を掛け合い、温泉を後にした。

夏至の祈りからしばらくして、フォトダマ号はクラッチ板のオーバーホールをし、よ
うやく復活した。

          2004.7.14  猛暑の東京にて  須田郡司拝

●フォトダマ通信後記
☆ここ一ヵ月あまり、写真の営業をしたが、雑誌社の反応は大変厳しいものだった。
しかし、焦らずにマイペースで日本石巡礼をつづけてゆきたいと思う。

☆7/10 群馬県館林のスペースUで日本石巡礼途中報告会をさせて頂く。タカユキオ
バナさん、川島健二さんをはじめ清水さん、和田さんにお世話になり、感謝申し上げ
ます。また、会場に起こし下さった皆さん、ありがとうございました。

★何年かぶりに、現代アートのコレクターかつアーティスト、そしてヒーラーである
金山叶佳さんと再会する。金山叶佳さんの著書『再誕Re-Born』(アートデイズ)を紹
介させて頂きます。
…私のしてきたことそのままが、皆さんに通用する方法では決してない。
また、私のRe-Bornのプロセスには深いわけがあり特殊だった。しかし、誰でもこの世
にいながらにして、Re-Born(再生、再誕)はできるのだということ、つまり「人生は
いつからだってやり直せるんだ」ということを、その方法のエッセンスをこの本から
受け取っていただけたら嬉しい。輪廻転生だけが再誕ではない、空海のいう「即身成
仏」はそんなに難しいことではない、と私は実感している。(プロローグより)
金山叶佳さんのホームページ  http://www.w-rose.jp

何年かぶりに再会した金山さんは、体の変化をきっかけに、魂の声を聴きながら自分
自身を旅しその体験をもとに本にされた。素敵な本です、どうぞ読んで見てください。
須田

◎  スライドトーク&ムビラライブのお知らせ 
《聖なる石と音の物語 アフリカの風を感じて…須田郡司スライドトーク&ムビラ・
マバズーワ ライブ》
2004年7月16日(金)start 20:30〜  チャージ¥1000 
◆イワクラ トーク 須田郡司(石の写真家、三年の日本石巡礼を続行中)
◆ムビラ ライブ ムビラ・マバズーワ(南部アフリカ、ジンバブエの民族楽器・ム
ビラの音を日本に紹介しながら演奏活動を行なっているバンド)
●CAFE&BAR EN(えん) CAFE 11:00〜 BAR 18:00〜2:00
横浜市金沢区金沢町205  TEL&FAX 045-787-4033
○最寄駅 金沢文庫駅(京浜急行)から徒歩約10分 

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